トランザクショナルメモリにおける実行パスを考慮したスケジューリング手法

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廣田 杏珠, 田渕 茉也, 間下 恵介, 津邑 公暁 : "トランザクショナルメモリにおける実行パスを考慮したスケジューリング手法", 情処研報 (SWoPP2016) ,pp1--8 (Aug. 2016) 予稿

Abstract

マルチコア環境では,一般的にロックを用いて共有リソースへのメモリアクセスを調停する.しか し,ロックにはデッドロックの発生や並列度の低下などの問題があるため,ロックを使用しない並行性制 御機構としてトランザクショナルメモリ(TM)が提案されている.この機構をハードウェア上で実現した ハードウェアトランザクショナルメモリ(HTM)では,共有リソースへのメモリアクセスが競合しない限 りトランザクションが投機的に実行される. この HTM ではトランザクションの実行が投機的であるため, 競合が発生し性能が低下する可能性がある.この問題に対し,スケジューリングの改良により競合を抑制 する研究が数多く行われてきた.しかし従来の手法はいずれも,分岐命令などに起因するトランザクショ ン内の実行パスの変化について考慮していない.そこで本稿では,トランザクション開始時に実行パスを 予測して実行時間を見積もり,それに基づいて競合を回避するスケジューリング手法を提案する.シミュ レーションによる評価の結果,16 スレッドで最大61.6%,平均13.8%の実行サイクル数削減を確認した.


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