履歴を利用したトランザクショナルメモリの競合回避手法

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間下 恵介, 山田 遼平, 三宅 翔, 津邑 公暁 : "履歴を利用したトランザクショナルメモリの競合回避手法", 情処研報 (SWoPP2015) ,pp1--9 (Aug. 2015) 予稿

Abstract

マルチコア環境では,一般的にロックを用いて共有変数へのアクセスを調停する.しかし,ロックには並列性の低下やデッドロックの発生などの問題があるため,これに代わる並行性制御機構としてトランザクショナルメモリ(TM)が期待を集めている.この機構をハードウェア上で実現したハードウェアトランザクショナルメモリ(HTM)では,共有変数に対するアクセス競合が発生しない限りトランザクションが投機的に実行される.このHTM では一度競合したトランザクション同士が再度並行実行される場合,競合が再発する可能性が高い.ところが従来のHTM では,このように競合が再発する可能性が高い場合も,トランザクションの実行を開始してしまうことで,一度競合したトランザクション同士で競合が頻発する場合がある.そこで本稿では,スレッドがトランザクションの実行を開始する前に,各トランザクションの競合履歴に基づいて,競合の発生を予測することで,競合を回避する手法を提案する.シミュレーションによる評価の結果,提案手法により,16 スレッド実行時において最大58.7%,平均13.9%の性能向上を達成した.