実行バイナリの静的解析による自動メモ化プロセッサの高速化

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津村 高範, 柴田 裕貴, 神村 和敬, 津邑 公暁, 中島 康彦 : "実行バイナリの静的解析による自動メモ化プロセッサの高速化", 情処研報 (SWoPP2014) ,pp1--9 (Jul. 2014) 予稿

Abstract

我々は,計算再利用技術に基づく自動メモ化プロセッサ,およびこれに値予測に基づく投機マルチスレッド実行を組み合わせた並列事前実行機構を提案している.自動メモ化プロセッサは,関数とループを計算再利用の対象としており,実行時にその入出力を再利用表に記憶しておくことで,同一入力による同一命令区間の実行を省略する.本稿では,再利用表の検索コストを削減するために,値が変化しない入力に対する一致比較を省略する手法を提案する.また,再利用の成功が見込めないループに対して,再利用の適用を中止する手法も併せて提案する.これらの手法では実行バイナリを静的解析することで得られる再利用対象区間の特徴を利用する.これは,分岐命令などの影響により,提案手法に用いる特徴を実行時に充分解析できないという問題があるからである.SPEC CPU95 を用いてシミュレーションにより評価した結果,通常通り命令を実行する場合と比較し,従来手法では最大40.6 %,平均11.9 %のサイクル数の削減であったのに対し,提案手法では最大51.8 %,平均16.5 %のサイクル数を削減し,有効性を確認した.